2013年8月31日土曜日

8月31日週報(2030年型ビジネスその2)

●太陽光発電は川下にうまみあり

 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)開始から1年あまりが経過し、太陽光発電関連企業の収益で明暗が分かれ始めた。

・生産工程の「川下」に位置する太陽電池パネルや、安川電機が手掛けるパワーコンディショナー(電力変換装置)などの部材は品質の高さを評価され、国内向けが好調。富士電機は長野に50億円かけてパワーコンディショナー工場。2015年には1000億円の売り上げ(総売り上げの13%)を見込む。

・安川電機は太陽電池向けパワコンの2014年3月期の売上高が前期の2倍の140億円程度になる見通し。利益率は10を超えるとしており、利益貢献も大きい。


・昭和シェル石油は太陽電池などの「エネルギーソリューション事業」1312月期の営業損益が150億円の黒字(前期は154億円の赤字)と、太陽電池事業への参入後初の黒字に転換する見通し。


・メガソーラー設置工事を手掛けるコムシスホールディングスも14年3月期の受注高は3割増の80億円を見込む。

・一方、太陽電池向けの多結晶シリコンを手掛けるトクヤマは、中国勢などとの価格競争が響いて13年4~6月期の出荷数量が前年同期から半減した。


・フェローテックは原材料の製造装置の売上高が14年3月期に1億5000万円と前期比で93%減りそう。


・パネル原料や製造装置など「川上」分野を手掛ける企業は海外での供給過剰が響いて低迷している。国は川上の国際競争力の強化を狙い、福島県郡山市に再生可能エネルギーの研究開発拠点を今年10月からスタートさせる。低コスト、高効率、高品質なパネルの製造に注力する。

 

●日本の風土に合った投資

・ネットなどを通じて小口投資を集めるクラウド・ファンディング大手、ミュージックセキュリティーズ(東京・千代田)は大阪府の商工会議所と連携する。第1弾として豊中市の豊中商工会議所と協力し、域内の中小企業を開拓する。独自の技術があっても担保が足りず銀行融資が受けられない企業が、ファンドを使って資金を調達できるようにする。成長が期待されるものの事業資金に悩む中小企業に対し、同社のノウハウを活用してファンドを組成。1社あたり500万~5000万円の資金調達をめざす。 同社が府内の商工会議所と連携するのは、対象となる有望な事業を開拓するためだ。今後、連携先の商工会議所を順次増やし、来年春までに14社以上の資金調達の支援が目標だ。

・他方、日本政策金融公庫は劣後ローンを組み、技術開発によって競争力をつけようとする企業を支援する。また、(独)産業技術総合研究所は連携し企業の技術開発を支援するとしている。

・金融と商工会議所、金融と産総研等の連携の仕組みが機能すれば、中小企業の技術開発に順風となるが、課題は研究機関と中小企業のモチベーションの調整。



●コンビニのアジア展開

・コンビニの国内店舗数は5万を超えたが、出店競争は一段と激しくなっている。ミニストップの出店計画数は13年度に170で、セブンイレブン・ジャパンやファミマ(ともに1500といった他の大手との差が大きい。そうした状況もにらんで、海外事業を拡大し成長を目指す。6月にはインドネシアにも進出した。

・ミニストップは2015年末をメドに、韓国の店舗数を日本と同数かそれ以上にする。現在約2200店を持つ日本を上回るペースで新店を出し、12年末より3割多い2500店に増やす。韓国は同社の海外事業の中軸。韓国には約2万4千店のコンビニがあり、ミニストップは4位。ただ各店の1日平均販売額は12年で140万ウォン(12万4千円)とトップ級。韓国でも若者らに目立つ個食需要を取り込む。


・ローソンは25日、中国・上海市内に中国でも人気の高いキャラクター「リラックマ」をテーマにしたコンビニエンスストア店舗を9月2日に開設すると発表した。森ビルが開発した超高層ビル「上海環球金融中心」内の店舗を改装して1年限定で展開する。同ビル内に勤めるオフィスワーカーの間で関心が高まるサラダやダイエットコーヒーなど「健康系食品」の品ぞろえも広げる。 ローソンは昨年から「ウルトラマン」や「名探偵コナン」をテーマとした店舗を上海市内に設けており、今回がキャラクター店舗第4弾。中国の都市部の2030歳代で関心が高まる健康系食品にも焦点を当て、新たな需要の掘り起こしを進める。


●iPSベンチャーを支援 革新機構と3メガ銀系、血小板量産で

・官民ファンドの産業革新機構と、三井住友銀行など3メガ銀傘下のベンチャーキャピタル3社は8月中に、iPS細胞を用いて血小板製剤の量産技術を開発中の製薬ベンチャー、「メガカリオン」に計116000万円を出資する。献血の不足により外科手術ができなくなる事態を解消する技術で、幅広いニーズを見込む。官民を挙げて先端医療産業の成長を後押しする狙いだ。出資額のうち革新機構が10億円を負担し、同社株式の過半を保有する株主となる。
・メガカリオンはiPS細胞を用いて血小板を安価に量産する技術について、2016年にも日米で臨床試験を始める。日本赤十字社によると、少子高齢化で27年には国内で必要な献血量約549万人分のうち、約2割に相当する101万人分が不足する見通し。iPS細胞を使えば効率的に血小板を製造でき、献血不足の解消につながる。先進国も日本と同様の献血不足の問題を抱えているほか、新興国では献血システムそのものが確立しておらず、量産ニーズは大きいとみている。同社は革新機構や3大銀から出資を通じた信用供与を得ることで、優秀な人材の獲得や大手製薬会社からの支援拡大を見込む。経済産業省はiPS細胞など再生医療の関連市場が12年の260億円から50年には3兆8000億円に拡大すると予測している。汎用性の高い技術を官民挙げて支援することで、先端分野での競争力を高める。

iPSベンチャーといえば、最近上場した「リプロセル」時価総額は1000億円を超えるが、事業の実態は大きくない。今後どのように株主の期待にこたえていくのか、注目される。


●通販市場は過去最高の5.4兆円に(12年度6.3%増

・通販協会の調査は、ジャパネットたかたや千趣会などカタログ通販やテレビ通販を中心とする加盟509社の売上高を集計。アマゾンジャパン(東京・目黒)など非加盟の有力企業180社の推計の事業売上高を合算した。12年度の伸び率は、11年度(9.0%増)と10年度(8.4%増)に比べて鈍化した。ただ、ほかの小売業態よりも高い成長率を維持している。会員企業の売上高は3.4%増、ネット通販を主力とする非会員企業は11.3%増だった。米アマゾン・ドット・コムが明らかにしたアマゾンジャパンの12年の売上高は78億ドル(約7300億円)で前年比18.6%増。衣料品では「ゾゾタウン」のスタートトゥデイや、食品ではオイシックス(東京・品川)などの伸びが目立つ。


●人口減、消費先細りも 労働集約型の転換必要は本当か?

・みずほ総合研究所の山本康雄シニアエコノミストは「中小・零細企業の再編・統合を進めるなどの生産性の向上により、付加価値を上げていくことが高齢化が本格化する日本経済にとっての重要課題だ」と強調する。日本総合研究所の山田久チーフエコノミストは「日本は先進諸国に比べて雇用に占める流通業の割合が高すぎる。これまでのように雇用の受け皿を担い続けるのは難しく、生産性の向上を通じて従業員数を縮小せざるを得ない」と解説する。新たな受け皿となりうるのは生産性の高い分野だ。山田氏は少子高齢化によって市場拡大が予想される医療・介護分野の生産性を高めることで「流通部門から雇用をシフトさせる必要がある」としている。

・他方、技術ベクトル研究所は雇用を増やすイノベーションによって、高齢者の雇用枠を増やし、消費活動を減らさないようにすることが重要と考える。高齢でも安全に就労できるよう環境整備や技術開発を行うことが課題先進国としての日本の役割であることを主張する。

 

●変わる自動車業界

・商業用の自動車は価格が顧客の優先項目だ。製造工場の稼働率を上げる努力をすることで、生産コストを下げる。

・スズキ(7269)の鈴木修会長兼社長は29日、新型軽トラック「キャリィ」の発表記者会見で、軽トラックのOEM(相手先ブランドによる生産)供給について、日産自動車(7201)、三菱自動車(7211)、マツダ(7261)の3社から要望があると明らかにした。「我々は販売の力がそんなにないので、要望があるところにはOEM供給をし、売っていただく」と述べた。






0 件のコメント:

コメントを投稿