2010年5月25日火曜日

バイオ投資の費用対効果

アムジェンやジェネンテックはまさにアメリカンドリームだった。爆発的なバイオベンチャーは再び現れるのだろうか。

星の数ほどの化合物から薬として選ばれたのは約2万種類。その構造をみると十あまりの単純な構造をもとにしたものである。
ここからわかることは生体に影響を及ぼし、かつ、薬としての利用が可能な製品は極めて限られているということだ。電子材料等人工の製品を扱う産業と大きく異なる。
既存薬より優れた薬効を示すために年々コストがかかっている。
その優れ方と余計にかかるコストのバランスはもはや限界にきているのではないか。
低分子化合物を抗体に変えたからといって、さほど違わないだろう。核酸も同じ。十把一絡げの世界に入ろうとしているように見える。 既存のバイオベンチャーの医薬品開発成功確率が大企業を上回っているという証拠はない。したがってどこへ投資すかは、宝くじを買うようなものである。しいて言うならば資本力のあるところがつぶれないだけ有望ということであろう。いずれにせよ、投資の魅力はない。


望みはある。医療の中心が治療から予防に変われば、その過渡期には何か爆発力のある型破りなビジネスモデルが登場するだろう。当研究所は緊張感をもって、その出現にアンテナをはっている。

2010年5月16日日曜日

製薬2010年問題

国内で16万人が従事する製薬企業。流通までカウントするとその産業の影響下にある国内従事者は100万人を越える。
今、その産業は2010年問題と呼ばれる困難に直面している。

1990年代は創薬の大発展期であった。1960年代に医薬品の審査ガイドラインの国際的な統一が進められ、また、コンビナトリアルケミストリーや分子生物学の波及効果で、新薬開発が加速された。ビジネスでは薬価制度のない海外で新薬の特許の獲得が増えた時期であった。年間50以上の新薬が市場に登場した。ゴールドラッシュという表現もそのころできた。

その特許が今いっせいに期限を迎えている。医薬品売り上げの60%以上は特許に基づく価値だ。その権利が切れると、新薬は後発薬(ジェネリック)との競争にさらされ、市場を奪われていく。
治療効果がジェネリックに対してそれほど優位でない新薬は、特許が切れていなくても価格競争に負ける。
こうした状況を改善するために、製薬企業は世界中から筋のよい医薬品パイプラインを導入するために資金を導出する。

1990年代はブロックバスター薬の時代であった。一剤で数千億円を売り上げる医薬品をいくつももっている企業が複数現れた。今、その特許が期限を迎えている。採りつくされたブロックバスター市場はジェネリック市場に変わるのである。その結果、ブロックバスター市場の売り上げ規模は3分の1に縮小すると見られている。

製薬企業はビジネスモデルの転換点にあるといえる。競合薬の多いブロックバスター市場で戦うためには、大規模な治験を覚悟しなければならない。治験患者の奪い合いは治験コストを吊り上げる。リスクも大きくなる。こうした中で、特定疾患の治療薬の開発に向かうもの、診断薬とともに新薬をだすもの、ワクチンビジネスに移るもの等、いくつかの模索が始まっている。

患者を市場とする中の模索がある一方で、健常人の予防ビジネスにも期待が集まっている。先進国の産業構造が変わり行く中で他業種からの新規参入も期待されるこの領域は制度整備が十分でなく、市場の信頼性が確立されていない。

日本の成長力を育成するためにも、厚生労働省はアンメット市場の開拓に向けた整備を現段階から行うべきでないか。

2010年5月9日日曜日

中国で伸びる日本ブランドの抽出

中国は日本の工場となってきたが、元切り上げの外的圧力も上がっており、将来的な人件費、土地代の高騰等がおこると考えられている。製造技術の優劣はもはや支障のない程度に先進国に追いついている。他方、中国国民の購買意欲、生活向上意欲は今後高まっていくだろう。こうした中、中国の国内企業に対し競争力のあるビジネスを展開できる日本企業が成長すると考えられる。そこで、サービスの質の高さから日本ブランドが有利に働くと思われる事業分野と企業を独断的に列挙した。

化粧品:資生堂、コーセー、ファンケル、カネボウ化粧品、花王
漫画・アニメ:角川H
生活ブランド:TOTO(トイレ)、旭化成(サランラップ)、パナソニック(生活家電)
日本の医薬:イーピーエス(医薬品輸出)、シスメックス(診断)
物流:佐川急便(宅配)、ヤマト運輸(宅配)、伊藤忠(産業)
水浄化:クボタ、伊藤忠、丸紅、双日

当研究所は、上記の中で、中国への入り方でうまさを感じる伊藤忠、ヤマト運輸、イーピーエスに注目している。

2010年5月8日土曜日

日本はサービスを輸出すべき

先進国において見られる政局の混乱は金融至上主義に基づく先進国特有の経済成長に限界が来たことを暗示している。イノベーションと称して新しい技術に基づく新しい市場を国内外に作ろうとする動きも活発になっているが、経済活動に対してスピードが追いついていない。
こうした中、先進国はどのような成長戦略を描けばよいのか。
当研究所の考えは、中国国内をクライアントとする先進国ノウハウを活用したサービス事業の推進が必要というもの。中国は現在、第二次産業の工場となっているが、元切り上げ等の調整によりその国際的役割も変わっていくだろう。先進国型の第三次産業中心の社会へシフトするには、日本を見る限り、30年はかかる。この間、先進国にとっては中国に心地よいサービスを提供することがビジネスとなる。
現在考えうる具体的な事業は、ロジスティクス技術を活用した陸運ではないだろうか。また、近未来的には、先進の医療サービス等も考えられる。
ヤマト運輸や日本通運などに期待。佐川も魅力的だが、公開していない。