2011年8月25日木曜日

ネットワーク依存社会の脅威

2011年6月9日のネイチャーに”Stuxnet”と名付けられたコンピューターウイルスの記事があった。このウイルスはPLC(プログラミング可能なシーケンス制御装置)を破壊する性質が付与されている点が従来のウイルスと異なるそうだ。
イランの原子力発電所の遠心分離装置の機能を破壊することが狙いだったとも考えられている。
このウイルスの登場で、国家インフラ基盤にサイバー攻撃を仕掛けることが現実のものとなったことが証明された。
これからますますネット依存の社会をつくっていこうという時に、これは大問題である。

今、起こっている技術革新は20世紀型の都市発展構造にマッチしない新しいタイプと言わざるを得ない。
技術革新の加速的進展の恩恵を受けるには、社会構造の根本的見直しを急がねばならない。

自律制御技術

近未来には自律制御型の製品が大きな市場を創りそうである。
自律制御はすでに軍事市場では無人偵察機など倍々ゲームで市場が拡大している。まさにターミネーターのスカイネットのような世界は目の前にある。
その他、自律制御によって薬剤を投与する治療デバイス、オートメーションラインでの製造の自律管理などいろいろ考えられる。
自律制御の究極は生物システムである。このシステムでは、自律性に障害を及ぼすものはアポトーシスや免疫システムによって排除する機能が働いている。
産業や社会に自律システムが導入された時、問題を引き起こす人間が自動的に排除されてしまうこともありうる。
そこまで考えると、自律制御型の社会の是非は消化不良である。

軍事市場で進行する技術革新をどのように受け止めればよいのだろうか。

2011年8月21日日曜日

投資への決意

20世紀、先進国は先端技術の優位性を利益に変える仕組みを作った。しかし、利益を効率的に得るために発展途上国の安い雇用を利用した。
先端技術開発の費用対効果が低下すると、発展途上国に対する競争力が低下した。
中国、インド、ブラジルといった比較的治安が安定してきた発展途上国に資本が流れるようになると、先進国が価値を生み出す力がより低下した。
金融市場で生み出されたマネーは発展途上国を勢いづけた。

しかし、急速に発展した国は不安定になるのは自然の摂理。そのもろさは中国の列車事故が象徴している。発展途上国の信用不安は投資マネーバブルを急速に収縮させている。

日本に振り返ると、金融至上主義にあおられながらも、企業は従来からの「ものづくり」ブランドを維持してきた。古いモデルと言われることもあるが、なんとか生きてきた。

私は日本のモノ作りが見直されることと信じ、これに投資する。

2011年8月19日金曜日

研究者の使命

吉川弘之先生は私の尊敬する科学者の1人。

8月18日の日経朝刊・経済教室に社会が科学者に求める使命に関する彼の考えが記してあった。
1)科学者は自身の専門性に責任を持たねばならない。
2)科学者は他の専門家と協力して人工物に関わる科学領域の構造を明らかにしなければならない。
3)科学者は社会の基盤にある科学領域の構造上の問題に協力して臨まなければならない。

2011年8月15日月曜日

産業革新機構の投資から見える経済産業省の産業振興の考え方

総額9000億円の官民ファンド、産業革新機構。
当初、バイオ等のベンチャー企業や世界的にも高い競争力のある国内中小企業を国際的企業にまで育てようというコンセプトで注目を浴びた。しかし、実際の投資実績は当初のコンセプトから程遠い。ここには経済産業省の国内産業振興の考え方が現れているとみる。

産業革新機構はベンチャーや新規事業の育成を11件手掛け、それに使った額は1258億円。他方、5件の事業統合を行い、それに使った額は2825億円であった。

もし、リスクの高い新規事業への投資を本気で目指すなら、11件は少なすぎるし、1件当たりの額は大きすぎる。民間の投資ファンドとリスクを分散し協調して進めることを考えれば、1258億円で1000社程度への投資は可能であろう。産業革新機構は明らかにリスクの低い企業に(比喩ではあるが)銀行の融資感覚で投資を行っている。一方で事業統合の平均は約570億円。産業革新機構は既存事業の合理化に力を入れているとみえる。

産業振興は主に市場競争力と雇用力の強化によってGDPを押し上げるものである。

一般に創業5年以下の若い企業の雇用創出力は大企業に比べ大きい。2000年以降に政策の力点だったベンチャー創出ブームは、主に雇用力の強化を目指したものだ。しかし、一定の効果はみられたものの高学歴人材の雇用不安を生みだし、その道の険しいことを皆が学んだ。

米国は投資による産業振興を行う風土であるが、日本は融資を基盤とした産業振興を行う風土である。幸い、その風土が借金大国日本の信用基盤にもなっている。

現在の経済産業省は、こうした日本の風土に合った産業振興は国内外の既存事業を国内企業を中心に統合することで市場競争力を強化することと考えているのではないだろうか。産業革新機構は官民ファンドという自らの中立的ブランドを使って競合事業の統合に舵をきっているようにみえる。

こうした動きは悪くないが、高齢化社会に向けて幅広い年齢層を受け入れる雇用力を育てることもそろそろ必要ではないか。