2013年6月29日土曜日

6月29日週報(世界的に復調)

【国際】
燃料電池車、国際安全基準に日本案 米欧など採用 。国連部会で各国合意へ:日本の安全基準が国際安全基準に認められることは、日本車の海外市場の確保に有利に働く。

 
【米国】
米国の景気回復は着実に進んでいる。
ダラス連銀によれば米国製造業活動は2年3カ月ぶりの高水準。他方、米商業ビルに海外マネー 中国やシンガポールが投資。
日本も米国市場へのテコ入れを強化:三菱自、北米販売テコ入れ ミラージュを投入  北米は国産車復調。
米国では安いシェールガスを使った化学工場建設の動きが活発化している。大陽日酸は2014年までに米フロリダ州に水素ガス2工場建設。 大陽日酸は拡大する水素ガスの需要を取り込むため、今後も工場増設を検討するとしている。

【欧州】
日欧EPA、産地ブランド保護焦点に 第2回会合始まる 
 「EUは日本に地理的表示制度で産地ブランドの保護対象を広げるよう迫っている。カマンベール、モッツァレラなどチーズ類、パルマハムなどが候補だ。日本は同制度の導入には前向きだが、EUの主張を受け入れれば「北海道産パルマ風ハム」などの商品名が使えなくなる懸念がある。」(日経新聞)

しかし、産地ブランド保護が世界的な動きになれば、中国やアジアにおける日本ブランドの保護にも有効であり、TPPをにらみながら有利な落とし所を見つけてほしいと願う限り。

【中国】
シャドーバンキングの破たんリスクが高まっている中国ではあるが、消費活動は堅調のようだ。日経新聞の社長100人調査では、中国事業展開「変更なし」6割。
大手企業の中国市場進出も続いている。以下は、今週の日経ニュースより。
・ソニーモバイル、新型スマホ中国で先行発売 
・塩野義、中国に開発支援子会社 
・アツギ、中国専用ストッキング 福助は代理店5割増 
・ホンダ、初の中国専用車「クライダー」発売 
・安川電機、中国の産業用ロボ工場開業 15年度に月1000 

 

【アジア】
今年はアジア市場への世界の注目が集まる年。国内企業の進出も続いている。日経社長100人調査では、4割の企業が増額、首位はタイ。
住商は韓国大手と合弁でベトナムで即席麺用製粉事業展開。世界4位のベトナムの即席麺向け市場を開拓する。
・サントリー食品、東南アでM&A 時価総額1兆円
・エキサイト、インドネシアに合弁 ネットポイント事業で 
・ファストリ「GU」海外へ まずインドネシア  22日から販売
・トヨタ(印シェア60%65%に強化)、印でディーゼルエンジン生産 15年めど年5万基 

【国内】
国内市場も景気回復堅実。社長100人調査 では、国内景気「拡大」9割、攻めの経営志向。
5月の鉱工業生産指数、4カ月連続上昇 火力発電用部品伸びる 
・広島銀、地元企業同士のM&A仲介拡大 人材育成や体制強化 
・(海外からの投資)後発薬の世界最大手テバ、日本で生産倍増 200億円投資 
 
外食産業が伸び:5月の外食売上高3.3%増 2カ月ぶり、ファストフード伸びる 
・ハイデ日高(外食)、営業最高益11億円 1335月期単独
 
建築活況:国内建設受注、5月24.5%増 官民ともに拡大 
・マンション発売5割増 5月の1都3県  ローン減税追い風
・タマホーム、営業益2割増の60億円 過去最高を更新
 
コモディティにはばらつき:
・ユニチャーム、46月期営業最高益 上期は上振れの公算
・ライトオン、営業利益12%減の38億円 12年9月~13年5月期

パソコン市場はばらつき:全体としては5月のパソコン出荷台数10.2%減 7カ月連続前年割れ。 他方、大塚商会の13年1~6月、営業益最高。パソコン販売伸びる。建設向けCAD用。セキュリティ関係では、サイボウズ、純利益84%減の4000万円 1312月期 広告宣伝費と開発費かさむ。
 
造船業界:三井造船、「非造船」倍増目指す中期計画 統合白紙で構造改革(日経ニュース) 

中でも稼ぎ頭と位置づけるのは海洋資源開発だ。三井海洋開発は洋上で石油やガスを積み出す洋上設備技術に強く世界2強の一角。特にブラジルなどで1000億円規模の案件を抱え、船やエンジンの受注規模を上回る。

 

【技術】
省エネ技術:機能性材料をつかった省エネ技術に注目。
・セシール、遮熱性高いカーテンを発売 節電需要見込む。 

分散型発電システムの普及:
・パナソニック 太陽電池販売25%増を計画 13年度
・自家発水力、売電用に改修 昭和電工・チッソ子会社など
・海洋温度差発電、ハワイで2プラント計画 海外で普及の可能性  100kw1000kw
・沖縄県、海洋温度差で発電 実証プラント稼働  50kw
・富士電機 パワーコンディショナー

(補足)自然エネルギー由来の発電システムでは計画的で安定的な電源供給は望めないために、送電・配電系統に影響を与えないように高機能なパワーコンディショナーといった系統安定化のための技術開発が進められており、特に送電系統に関しては日本では資源エネルギー庁からの「電力系統連系技術要件ガイドライン」によって指導されている。

新しい社会構造へ変革の匂い:
・ウィンドウズ8.1を公開 3Dプリンターと連携。

PCのOSが3Dプリンター対応になると、何が起こるか。多くの部品はデジタルデータで転送されるだろう(物流の変革)。個人が製造業に参入する機会が増える(製造業の変革)。市場はスケールフリーネットワークからランダムネットワーク化へ。個人の組織帰属性は薄らぎ、社会への帰属、コミュニティーへの帰属がより強くなるように思われる。

2013年6月22日土曜日

6月21日週報(いよいよアジア)

これからは週報のスタイルでいきます。1週間のニュースから世界・国内の動向をまとめ、次の週の投資方針を考える契機に使っていただければ幸いです。

【日経平均と投資戦略】
週の前半は大きく下げ、後半は持ち直し。下げたときは全面安。あげた時は、ばらばら。ここに投資のヒントあり。株価は安定に向かうとみられており、次の全面安が買いのチャンス。売りは参議院選のころか。都議会議員選挙後の次週は利益確定の機会かもしれない。

【世界動向】
米国:景気回復傾向を確認。量的金融緩和の縮小示唆から株式市場は売りが目立った。

中国:地域開発しても企業入らず、投資回収が難しくなっている。シャドーバンキングに貸倒が起こる可能性は高まっている。産業に目を向ければ、半導体市場は縮小。あおりを受けているのが台湾や日本。他方、コモディティは紙おむつニーズ拡大。

アジア:インド、東南アジアの市場は拡大。黒字転換の日本企業が増えている。台湾への加工機械増加。

【国内市場】
白物家電が縮小。将来的には長期間使え、消耗品やサービスで利益をとる白物家電ビジネスに変わるかもしれない。
デパートの美術・宝飾・貴金属の売り上げ増加(一時的であろう)。食品、衣料は減少→これも一時的であろうか。
4月、5月コンビニ、スーパーの売り上げ減少。
物流は増益→景気は回復している。

【注目技術】
大林組:建築資材の自動運搬システム開発。高齢者比率の高い建設現場の安全性を向上。社会の高齢化対策を支える技術として横展開が期待される。

【知的なニュース】
東京薬科大学:38億年前の生物の蛋白質を復元。遺伝子配列の系統解析を逆に利用し、生命発生のころの遺伝子配列を推定するだけでなく、実際に合成し、蛋白質の性質を調べた点がすごい。100度近い温度で安定だったことから、生命が発生する環境が想像される。その手があったか、という研究に脱帽。





2013年6月9日日曜日

3Dプリンタがもたらすマスプロダクション時代の終焉

近代産業の中心的課題の一つは製品製造工程を大量生産プロセスにのせることであった。均一なサービスの提供とコスト削減を実現するのに好都合だった大量生産プロセス技術。発展途上国がこの技術をものにしたことで、彼らは先進国を市場として大いに発展してきた。

どこでも同じものが手に入る。便利ではあるが、退屈でもある。顧客の嗜好の変化を3Dプリンタが加速する。必要なものは自分でつくる。3Dプリンタはこれまで手の届かなかったプロのモノづくりを個人が手にする。かつてはパテを器用に使いこなして改造したプラモデル。3Dプリンタはオリジナルのプラモデルを自宅で作ることを可能にする。生産中止になった家電製品の部品。簡単な部品の欠陥によって家電製品を買い替えた人は多いのではないか。3Dプリンタによって自宅でそれを作ってしまうことができれば、家電を買い替えることも少なくなるだろう。

3Dプリンタの出現によって産業のパラダイムがシフトするかもしれない。中国が独占してきた安いおもちゃに見向きもしなくなる先進国の子供たちが想像される。思考をこらしたおもちゃを自分で作ることの楽しさ。また、家電製品の回転率を押し下げるだろう。

コモディティ産業の収益構造が大きく変わる。家電製品は安いより長持ちするものに人気が集まるだろう。おもちゃ等の簡単なものは、デジタルファイルの設計図をインターネットで顧客に送れば、3Dプリンタでパーツを作り、自作できる。金型も個人が作れる。個人のアイデアを形にして販売することも容易になる。

生産活動はグローバルからローカルに回帰するかもしれない。製品開発のコスト障壁が崩されると、企業の製品開発競争に個人が参入する。個人の生産活動によって自然発生する膨大な試作製品が顧客を奪い合う。

著書「富の未来」において生産消費者の経済効果の大きさを訴えたアルビン・トフラーは3Dプリンタの出現をどう読み解くのだろうか。興味深い。