2013年1月16日水曜日

個人投資家向けiPS細胞市場の考え方

山中教授がノーベル賞を早々に受賞したのは、技術を待ち望む一般市民の声が大きかったからという人情深いエピソードがありました。
政府は実用化を促進し、医療イノベーションを興そうということで、予算をiPS細胞研究に集中投下する予定です。
巷ではiPS細胞をキーワードにした会社への投資の勧誘が活発になっていると聞きます。
そこで、特に個人投資家が後悔しないために知っておいた方がよい情報をまとめてみました。

【創薬用途】
国内の医薬品市場は約8兆円。iPS細胞は主に研究中の医薬品候補の評価に使用。医薬品の研究開発市場は1.6兆円。
その6割は臨床試験(iPS細胞は使いません)。
残りの4割(6400億円)のおよそ1%が細胞など生体試料に費やされるコストと考えればよいでしょう。即ち64億円。
その一部がiPS細胞市場ということになります。

【再生医療用途】
現在、再生医療は患者の正常な細胞を増やして患者に戻す治療が行われています。
特に、視覚障害の治療は報道もされ、有名です。
保険適用外の治療では、患者の脂肪細胞に含まれる幹細胞を増やして、患者の血液に戻すことで、自己治癒力を高める医療があります。また、美容目的で、同様の手法が適用されたいしています。非常に高額なため、一般の患者にはあまり御縁がない市場です。

さて、iPS細胞は、患者由来の幹細胞の代替品として期待されています。
市場にでるためには安全性の問題をクリアしなければなりません。

まず、iPS細胞の製造に人に感染するウイルス(またはその一部)を使う点が問題にされています。
ウイルスから分離された部品を使う場合、ウイルスが絶対に混入していないことを示すのが困難であり、ウイルスを使った場合と同等に扱わなければなりません。
ウイルスを使わないでiPS細胞を創る技術を待たねばなりません。

次に、iPS細胞の品質の問題があります。治療に使われるためには、患者から細胞を分離し、iPS細胞をつくり、患者に戻すという流れになります。そのプロセスで作られた複数のiPS細胞の品質がまちまちであるため、治療に使えるiPS細胞の基準を設ける必要があります。これが、まだできていません。

視覚障害、脊髄損傷、糖尿病、腎不全等の治療に待たれているiPS細胞ですが、実用化にはまだ、8年以上はかかると思った方がよいでしょう。

【研究支援】
国が予算を付けると、iPS細胞の研究に必要な装置の市場が拡大すると思われます。
例えば、細胞分離機器(セルソーター等)、染色体の分析装置(DNAシーケンサーや染色体画像解析装置等)、細胞自動培養装置及び培養用試薬類。
注意を要するのは、国の予算の切れ目が市場の切れ目になりかねない。
黒字の会社が一転、赤字ということが起こりえる市場です。

以上、iPS細胞関連銘柄を検討する時は、ちょっと参考にしてみてください。

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