2011年8月15日月曜日

産業革新機構の投資から見える経済産業省の産業振興の考え方

総額9000億円の官民ファンド、産業革新機構。
当初、バイオ等のベンチャー企業や世界的にも高い競争力のある国内中小企業を国際的企業にまで育てようというコンセプトで注目を浴びた。しかし、実際の投資実績は当初のコンセプトから程遠い。ここには経済産業省の国内産業振興の考え方が現れているとみる。

産業革新機構はベンチャーや新規事業の育成を11件手掛け、それに使った額は1258億円。他方、5件の事業統合を行い、それに使った額は2825億円であった。

もし、リスクの高い新規事業への投資を本気で目指すなら、11件は少なすぎるし、1件当たりの額は大きすぎる。民間の投資ファンドとリスクを分散し協調して進めることを考えれば、1258億円で1000社程度への投資は可能であろう。産業革新機構は明らかにリスクの低い企業に(比喩ではあるが)銀行の融資感覚で投資を行っている。一方で事業統合の平均は約570億円。産業革新機構は既存事業の合理化に力を入れているとみえる。

産業振興は主に市場競争力と雇用力の強化によってGDPを押し上げるものである。

一般に創業5年以下の若い企業の雇用創出力は大企業に比べ大きい。2000年以降に政策の力点だったベンチャー創出ブームは、主に雇用力の強化を目指したものだ。しかし、一定の効果はみられたものの高学歴人材の雇用不安を生みだし、その道の険しいことを皆が学んだ。

米国は投資による産業振興を行う風土であるが、日本は融資を基盤とした産業振興を行う風土である。幸い、その風土が借金大国日本の信用基盤にもなっている。

現在の経済産業省は、こうした日本の風土に合った産業振興は国内外の既存事業を国内企業を中心に統合することで市場競争力を強化することと考えているのではないだろうか。産業革新機構は官民ファンドという自らの中立的ブランドを使って競合事業の統合に舵をきっているようにみえる。

こうした動きは悪くないが、高齢化社会に向けて幅広い年齢層を受け入れる雇用力を育てることもそろそろ必要ではないか。

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